【卒論全文公開:序論】

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第1章 序論 

1.1研究の背景と目的

 録画機能の発達、スマートフォンやタブレットの普及、映像配信サービスの台頭によって、映像コンテンツはここ10年で急速に変化してきた。その変化の中で、日本では今までテレビでの放送に付随していた広告、特にコマーシャル(以下CMと呼ぶ)は、録画機の機能によって視聴者に安易に飛ばされ、映像配信サービスでは、プレミアムサービスとしてお金を払うことで視聴者がCMをカットすることができるようになった。広告を出している会社にとっては痛手となる状況であるに違いない。この状況は、安藤(2018)がテレビを見ながらスマートフォンなどの他の電子機器を使用する場合の広告に対する負の効果を述べているように、マルチタスキングによっても加速している。そこで現代では、プロダクトプレイスメントが発展してきた。プロダクトプレイスメントとは「スポンサー企業がメディアに対価を払い、自社の商品やサービスを映画やテレビ番組などの中でさりげなく露出させたり、登場人物のセリフにブランド名を出したりすることにより、視聴者の記憶に残り、好感を持たせさらに購買行動に導くマーケティング手法(連,2016,p.52)」のことである。プロダクトプレイスメントは、世界で重要性が高まっているものの、日本のドラマにおいても有効に活用されているとは言い難い。

 本論文では、日本人視聴者がプロダクトプレイスメントに対していかなる行動を取るか明らかにし、映像作品が映像配信サービスなどを通して提供された際のプロダクトプレイスメントのメリットを明らかにすることで、日本で映像を制作する企業や広告を出す企業へのプロダクトプレイスメントのさらなる使用を提案したい。

 先行研究においては、アンケートを用いて日本ドラマにおけるプロダクトプレイスメントの視聴者の態度が明らかにされてきた(馬場,2005)。一方で、先行研究は録画機能の台頭によるCM飛ばしの影響までしか述べられておらず(村山,2016)、動画配信サービスが普及した現代社会に先行研究で得られた結果を適用するには不十分だと言える。

 そこで、本論文は2000年代の録画機能が発達した日本におけるプロダクトプレイスメント研究から、さらにスマートフォン、映像配信サービスが発達した2020年代においてプロダクトプレイスメントがどういった効果をもたらしうるのか明らかにする。また、グローバル化・インターネットの発達により映像作品が容易に海外に進出する中で起こる効果をタイのプロダクトプレイスメントを元に日本と比較して分析し、日本人視聴者に行ったアンケート結果から映像作品を通した異文化受容についても考察する。

1.2構成

本論文は以下のように構成される。2章では先行研究の批判的検討を行い、リサーチクエスチョンを定める。3章では、ドラマ分析とアンケート調査における研究方法について述べる。4章では、研究の結果に基づき、日本のプロダクトプレイスメントとタイのプロダクトプレイスメントの違いとアンケート調査の結果を分析し整理する。最後に5章で本論文の結論を述べる。

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