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2020年の夏に卒業論文のためにTwitterでアンケートへの協力を呼びかけたところ、ありがたいことに300近い回答をいただき、中には「卒業論文が完成したら、読める形で公開してもらえたら嬉しい」という声までいただきました。もう論文を書くことは二度とないと思うので、この機会に公開したいと思い、まとめます。
「タイドラマの忖度好きだからこの論文気になるけど長い文章なんか読んでられない」というそこのあなた!
こちらの「すぐわかる卒論」から私が最終発表で使用したプレゼンテーションをご覧いただけますのでぜひこの機会に。
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要旨
本稿は、2020年代の日本におけるプロダクトプレイスメントの効果的な活用を提案することを目的としている。プロダクトプレイスメントとはスポンサー企業が対価を払い、自社の商品をテレビ番組などの中でさりげなく露出させることにより、視聴者を購買行動に導くマーケティング手法のことである。先行研究では、ドラマのプロダクトプレイスメント活用と視聴者の反応について言及されてきた。しかし、現在の日本ドラマでは録画や映像配信サービスの台頭により、C Mの意義が薄くなっているにもかかわらず、プロダクトプレイスメントが活用されているとは言い難い。そこで現在の日本ドラマとプロダクトプレイスメントを積極的に活用するタイドラマを比較分析した。また、日本人へのアンケート調査でプロダクトプレイスメントへの態度を明らかにした。結果として、日本のドラマでは意図的なプレイスメントではなく、ストーリーに必要な製品を協力商品として登場させる手法にとどまっていた。一方で、タイドラマではスポンサー製品をストーリーと結びつけプレイスメントしている作品が多く見受けられた。また、アンケート調査からは、現代の多くの視聴者はドラマ視聴時にCMを見ていないが、プロダクトプレイスメントが有効であることを示す態度を取ることが明らかになった。先行研究で挙がったプロダクトプレイスメントへの視聴者の共感・親近感は「ストーリーへの共感・俳優への共感・推しの影響力を社会に伝えることへの共感」の大きく3つに分けられ、特定の芸能人を応援するファンと結びつき、効果を発揮する可能性があることがわかった。今後の課題としては、より効果的な導入を目指すため、プロダクトプレイスメントを取り入れる側のテレビ局やスポンサー企業が直面する問題に関する調査が必要であることを挙げた。
目次
第1章 序論
1.1研究の背景と目的
1.2構成
第2章 先行研究とリサーチクエスチョン
2.1先行研究の批判的検討
2.1.1プロダクトプレイスメントと歴史
2.1.2プロダクトプレイスメントの効果的作用
2.1.3プロダクトプレイスメントの非効果的な作用
2.1.4ドラマにおける非意図的なプロダクトプレイスメントが多い日本
2.1.5タイのプロダクトプレイスメントの活用背景
2.1.6文化や状況に合わせたプロダクトプレイスメントの活用
2.1.7場所を用いるプロダクトプレイスメント
2.1.8広告分析の手法
2.1.9 2020年代におけるテレビCMの阻害要因
2.1.10 2020年代における日本のドラマを取り巻く状況
2.2 リサーチクエスチョン
第3章 研究方法
3.1ドラマ分析
3.2アンケート
3.2.1 調査方法と調査対象
3.2.2 調査項目
第4章 日タイのプロダクトプレイスメントの分析と整理
4.1日本のドラマの分析
4.2 タイドラマの分析
4.3日本人の受け手によるプロダクトプレイスメントの感じ方
4.4日本人以外の受け手によるプロダクトプレイスメントの感じ方
第5章 結論
参考文献
付録1
付録2