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4.3日本人の受け手によるプロダクトプレイスメントの感じ方
では次に、アンケート調査の結果を見ていこう。
まず、日本国籍を有すると回答した284名の結果を対象にまとめる。
Figure 9 年齢構成(アンケート結果をもとに筆者作成)
プレイスメントされる製品(e.g.,化粧品)を限定して問う質問がなかったことや、ジェンダーニュートラルの考えで、性別の問いは入れなった。60歳以上は0.4%、19歳以下は7.0%、50代は9.1%、40代は18.2%、30代は20.7%で、回答が最も多かったのは20代で44.6%となった。
Figure 10 リアルタイム放送のCMへの対応(アンケート結果をもとに筆者作成)
CMを飛ばさずに見る層は全体の9.9%であった。CMの間は別のことをする、いわゆるマルチタスキングは59.5%と、藤井(2017)が2014年に行った調査50.2%を上回っていた。リアルタイムで放送されているドラマを見ていない人は30.6%であった。しかし、リアルタイムでドラマを見ない人の73.9%(65人)は定額視聴サービスに加入していると回答した。ドラマ内広告により、より多くの視聴者にリーチできることが予測される。
Figure 11 録画ドラマのCMへの対応(アンケート結果をもとに筆者作成)
録画したドラマに関して問うと、88.8%が「CMはとばす」、「CMの間は別なことをする」が3.5%、「きちんとCMも見る」層は0.7%であり、ほとんどのドラマ視聴者はCMに消極的な態度をとることがわかった。「録画したドラマは見ない」と回答した7.0%、20名のうち、「定額視聴サービスに登録している」と回答したのは75.0%、15人であった。この結果からも、テレビで視聴する層と合わせて、配信サービスでドラマが配信された時、より多くの視聴者にリーチすることのできる可能性が示された。
Figure 12 YouTubeのCMへの対応(アンケート結果をもとに筆者作成)
「CMはスキップする」と回答したのは86.7%、「CMの間は別なことをする」は2.8%、「YouTube Premium に加入しているのでCMが出ない」が8.4%、「CMもきちんと見るは」1.8%、「YouTubeを見ない」は0.4%であった。「ただテレビで見ない人が増えたのなら、従来のテレビ放送されたドラマコンテンツをネットで配信する際に、テレビ放送と同じく、ドラマを細分化して合間に広告を流せば良い」という考えを否定するためにこの項目を調査した。結果として、予測通りネットでの動画視聴でもCMは飛ばされる傾向にあるため、現在のテレビ放送をネット上でも踏襲するのは無意味だといえよう。
Figure 13 定額視聴サービスへの登録 (アンケート結果をもとに筆者作成)
69.4%の人が何らかの定額視聴サービスに登録していた。
Figure 14 スポンサーへの態度 (アンケート結果をもとに筆者作成)
「まったく気にしない」が46.7%、「ほとんど気にしない」が37.5%、「やや気にする」が15.8%、「非常に気にする」が0%であった。この場合の「気にする」をネガティブなイメージなのか、ポジティブなイメージで捉えたのかを回答してもらうセクションを作るべきであった。この結果から多数の視聴者はスポンサーを気にしておらず、ドラマで実装されたとき、プロダクトプレイスメントに気づかずにドラマを楽しむ層が多いことが予想される。
Figure 15 ドラマ登場商品の購買経験の有無(アンケート結果をもとに筆者作成)
この結果から、「あなたはドラマを見る際にスポンサーを気にしますか」という問いの「気にする」という回答は好意的なイメージだったと推測できる。単純にこの結果からだけ述べると、ドラマを見た1/3の視聴者は製品を買うポテンシャルがあるということになる。馬場(2005)の研究ではドラマの中に出てきた製品を買ったことのある層をプロダクトプレイスメント効果のある層とした。その層はCMを見ない傾向にあった。本調査でも、プロダクトプレイスメント効果のある層は、リアルタイムで放送されているドラマでは87.2%、録画したドラマでは98.8%、YouTubeでは96.5%がCMを見ておらず、CM離れの傾向にある。CMを見ないにも関わらず3割の人がドラマの影響で商品を購入しているのであるから、CMを見る視聴者より、ドラマを見る視聴者に訴えかけるプロダクトプレイスメントが効果的であることがうかがえる。
Table 5「ドラマの中でスポンサーを覚えているもの」の回答(筆者作成)
「あなたはドラマの中に出てきた商品などをそのドラマの影響で実際に買ったことがありますか」という問いへの自由記述では以下のような意見が見られた(抜粋)。日本ドラマのほか、海外ドラマの影響を受けて購入したものも多く挙げられた。
Table 6 「ドラマの影響で実際に買ったことがある商品」の回答(筆者作成)
Figure 16 好きな芸能人が使用したドラマ内で使用した商品の購買意欲の有無 (アンケート結果をもとに筆者作成)
買う可能性を問うたところ、19.9% が「非常に買ってみたい」、53.9%が「どちらかというと買ってみたい」と回答している。自由記述での理由の回答は大きく「応援している俳優(以下推し)と同じものを持ちたい」という思い、「推しの仕事を応援して、推しに影響力があること、またイメージタレントに起用して欲しいので購入する」というもの、「ドラマのストーリーや雰囲気に共感し、その世界観に入りたい、感情移入したいので購入する」というもの、「あくまで主観は自分であり、自分が欲しいと思ったら買う、俳優が自分の購買欲を左右する理由にはなり得ない」という4つに分けられた。
Figure 17 ドラマ視聴者が感じる共感の3つの分類(筆者作成)
「俳優が身につけているもの・使用しているものはきっと高価だから買おうと思わない」という、自分とドラマの世界を完全に切り離して考えている人がいる一方で、「ドラマ内で着用していたり使用していたりすることは、自分が実際に使うときのイメージをしやすい/より豪華に見える」とドラマの世界観に共感し、小道具などを購入する人も一定数見受けられた。ファンとしての意見、いわゆるオタク活動の目線からの意見の中には、「ドラマで使用したものより、その俳優が普段から使っているものの方が買おうと思う、使いたいと思う」というプロダクトプレイスメントに批判的な意見も見受けられた。また、「推しがCMキャラクターをしている商品は購入するが、ドラマで出てきただけ・着用しただけでは買わない」という意見もあった。
「タイのドラマのダイレクトなプロダクトプレイスメントが癖になってしまった」という、異文化に対する好奇心から購入を積極的にするようになったという意見も見られた。これは先行研究にあったような文化の違いが積極的に働いた事例であろう。
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